祖母の歌集をつくりました

祖母が長年作りためていた短歌をまとめた歌集をつくりました。
私が生まれる前から日々の楽しみとして続けていたという短歌。
書き溜めていたノートには、離れて暮らす私の知らなかった祖母の暮らしが綴られていました。

ノートにあった短歌は平成10年代くらいからの約800首。
「自分が亡くなった時は一緒に燃やしてほしい」と言う祖母の言葉に、
きちんと残しておかないと、失われてしまうのはもったいないと思い、
「本にしてみたらどう?」と持ちかけました。

妹と分担して、全てを書き起こし、わからないところは祖母に確認しながら一覧にしました。その後、載せるものと載せないものを祖母に決めてもらいました。ジャンルごとに分類することも試みましたが、あまりに数が多いのと、毎年同じ季節を繰り返しているようでいて、夫が病気になったり、孫が大学に受かったり、暮らしの変化もずっと続いていて、それを切り貼りするのは難しいと判断してやめました。祖母が子どもの頃のものだけは一つの章にまとめ、大きな区切りをいくつかつける程度になりました。

歌集を作ったり、小見出しをつける知識もなく、いくつかの歌集を手に取ってレイアウトを参考にした程度なので、至らないところも数多くあるかと思いますが、書き起こしを始めてから少し寝かせる時期なども挟み、祖母からの「早くしないと死んでしまうわ」という催促を受けて、3年かけてやっと完成しました。

制作にあたっては、近所に住むデザイナーさんにInDesignの使い方を教えてもらったり、タイトルにした「遊山箱」の絵をイラストレーターの友人にお願いしたりしました。祖母が一番気に入っている、子どもの頃の歌にちなんでいます。

遊山箱というのは、徳島独特の文化で、節句の時に子どもたちが持っていく2段・3段重ねの重箱のようなものです。持ち運べるように外箱に取手がついていて、さまざまな色や絵柄があしらってあります。赤飯やういろうなどを詰めてもらって、友達と遊びに行き、お弁当を広げて楽しんだそうです。なんと風流な文化。

ちょうど私自身も内海町に暮らしの拠点を移したタイミングだったこともあり、短歌を通じて知る、徳島の山間部の祖母の暮らしはとてもおもしろかったです。祖母が子どもの頃のことを綴った歌からは、自分自身が知らなかったルーツの一部を知るような気持ちにもなりました。

祖母もとても喜んでくれてよかったです。